
ISBN978-4-915342-62-2
B5判/470ページ
川井 唯史・中田 和義:編著
※日本図書館協会の選定図書に選ばれました※
甲殻類研究の第一人者をはじめとする総勢45名の執筆,最新の研究成果を網羅した450ページにも及ぶ信頼性の高い充実した内容,河川やダムの工事で必要 な生態系保全の情報・技術が満載。
淡水甲殻類の研究・保全に携わるには必携の一冊です!!
淡水にすむ大型の甲殻類の保全について,日本で初めて書かれた総合書
本書は,第一線で活躍する国内の研究者が執筆した信頼性の高いものである。また現場に精通した技術者が実体験に基づいた実務を多数紹介している。
世界と国内のエビ・カニ類の検索表,専門用語の解説があり,国内の全種については分布域も紹介され(レッドリストとの対照もされている),ヌマエビ科幼生 の検索表もある。主要種の解説もあるので,専門家ばかりでなく,淡水のエビ・カニ・ザリガニ類に興味をもつ初学者や,技術者にとっても必携の書である。
甲殻類研究の歴史,漁業や食文化についても紹介され,「エビ・カニ・ザリガニ好き」も楽しく読める,手元に置きたい1冊になる。
国外執筆陣も充実し,日本の淡水甲殻類相と関連が深い豪州,日本に隣接する韓国とロシア極東域の淡水産エビ・カニ・ザリガニ類の紹介もされている。謎の多 かった隣国の実情を載せた貴重な1冊でもある。(編者より)
●目次●
カラー口絵
まえがき
第1章:基礎生物学
・甲殻類の体各部名称(川井 唯史・林 健一・鈴木 廣志)
・世界の淡水甲殻十脚類(林 健一)〈(1)世界の淡水甲殻十脚類(2)国内の淡水甲殻十脚類(3)ヒトとの関係〉
・日本の淡水産甲殻十脚類(鈴木 廣志・成瀬 貫)〈(1)淡水産のエビ類(2)淡水産のカニ類〉
・淡水産コエビ下目の生物地理(朝倉 彰)〈(1)世界の淡水産コエビ下目の地理分布(2)代表的な属の生物地理と系統関係(3)日本産淡水エビ類の生物地理〉
・サワガニ類の分子系統学的研究(瀬川 涼子)〈(1)はじめに(2)日本産サワガニ類の分子系統(3)生物地理学的考察(4)まとめ〉
コラム①エビ・カニ類からのDNA抽出メモ(山崎 いづみ)
文献
第2章:保全生物学
・小川のエビ・カニ類版ー保全関係用語の解説ー(川井 唯史・中山 聖子)
・「稀少動物」に指定される日本産十脚甲殻類(齋藤 暢宏)〈(1)はじめに(2)RDBとは(3)日本産十脚甲殻類の指定状況とその特色(4)RDBにもとめること:むすびにかえて〉
・淡水性エビ類の生態と保全(中田 和義・浜野 龍夫・天野 邦彦・三輪 準二)〈(1)淡水性エビ類の生態(2)淡水性エビ類の生息環境(3)淡水性エビ類を対象とした調査手法(4)淡水性エビ類の保全(5)おわりに〉
コラム②湖沼における淡水性エビ類について(宇佐美 葉・中田 和義)
・モクズガニの生態と保全(浜野 龍夫・中田 和義)〈(1)はじめに(2)生態(3)保全・増殖〉
コラム ③ 淡水産十脚類にみられる寄生性甲殻類(齋藤 暢宏)
・ザリガニ類の生態と保全(中田 和義・松原 創)〈(1)国内でみられるザリガニ類とその現状(2)ニホンザリガニの生態(3)ニホンザリガニの保全(4)特定外来生物ウチダザリガニの生態(5)外 来ザリガニ類対策における環境教育・普及啓発の意義(6)おわりに〉
コラム④ウチダザリガニはどのくらい移動するのかー欧州の事例からみる移動分散の速度ー(八神 鉄彦)
・外来ザリガニ問題と外来生物法(中山 聖子・水谷 知生・吉田 剛司・加納 光樹)〈(1)はじめに(2)外来ザリガニ類がもつ侵略性(3)外来ザリガニ類の拡散と被害の実態(4)外来生物法における外来ザリガニ類の取り扱い (5)外来ザリガニ対策の現状と課題〉
・市民への外来種問題の普及を中心とした保全(野谷 悦子)〈(1)市民によるエビ・カニ類保全の方法と背景(2)ボランティアダイバーによるウチダザリガニの防除活動(3)今後の方向性(4)市民による外 来種問題の 普及を通じた保全を評価する〉
コラム⑤地域住民と事業者による社会的な保全活動(齋藤 敦子)
文献
第3章:保全生物学の各論
・淡水性エビ類の流程分布様式(宇佐美 葉・渡邊 精一)〈(1)はじめに(2)流程分布の調査の実際(3)各水系における流程分布(4)流程分布様式の類型化(5)流程分布に影響を及ぼす要因(6)同一 種内におけ る流程分布の不連続性(7)おわりに〉
コラム⑥移植実験法(石川 博規・松山 賢一・戸田 秀夫・飯村 幸代)
・ヌマエビ科の幼生(中原 泰彦)〈(1)ヌマエビ科の幼生発達(2)幼生の発達と形態(3)九州以北産ヌマエビ科幼生の検索(4)ヌマエビ科幼生の生態解明への課題〉
コラム⑦湖沼における資源量推定(折戸 聖)
・テナガエビ類はいかに進化してきたか(益子 計夫)〈(1)テナガエビ類の生活史特性(2)繁殖形質の適応と進化(3)生物保全と基礎研究の接点ー琵琶湖のテナガエビ〉
・モクズガニ類の遺伝と種分化(山崎 いづみ)〈(1)モクズガニ(2)集団の遺伝的構造を調べる(3)日本のモクズガニ類集団の遺伝的分化(4)オガサワラモクズガニE. ogasawaraensis(5)モクズガニ属内における日本産モクズガニ類の系統的位置(6)遺伝的多様性のかく乱に対する懸念〉
・物理環境の新しい調査手法ーニホンザリガニを対象とした河床環境の定量化ー(池田 幸資・布川 雅典)〈(1)はじめに(2)河床底質(3)河床間隙水位(4)河床間隙水温(5)おわりに〉
コラム⑧水温と水質の記録方法(佐藤 公俊)
・アメリカザリガニによる生態系への影響とその駆除手法(苅部 治紀・西原 昇吾)〈(1)アメリカザリガニが在来生物に及ぼす影響(2)国内におけるアメリカザリガニによる被害の実際(3)国内におけるアメリカザリガニ駆除対策 の現状(4)まとめ〉
コラム⑨外来哺乳類によるザリガニ類への影響(竹下 毅)
文献
第4章:歴史・文化・風俗
・淡水産エビ類の民話伝承,伝統的な漁法,食文化(新島 偉行)〈(1)民話・伝承のエビとホタルエビ(2)淡水産エビ類の漁業(3)淡水産エビ類を捕る(4)淡水産エビ類を食べる〉
コラム⑩特定外来生物・要注意外来生物に指定された甲殻類の食材としての流通(野中 俊文)
・日本の甲殻類研究小史(山口 隆男)〈(1)江戸時代以前(2)江戸時代(3)欧米の研究者による日本産甲殻類の研究(4)チャレンジャー号の来航とドイツの動物学者3名の貢献(5) 日本における甲殻類分類学の発足(6)啓蒙的書籍の刊行(7)生態学,生物地理学的な研究の展開(8)エビ類の養殖技術の開発(9)日本甲殻類学会 (Carcinological Society of Japan)の設立と活動(10)甲殻類研究の今後の課題(11)甲殻類研究に関連する諸学会の小史〉
コラム⑪江戸前のテナガエビ釣り今・昔(新島 偉行)
文献
第5章:国外の事例
・オーストラリア産ザリガニ類(Euastacus属)の保全(Jason Coughran & James Furse/翻訳:中田 和義)
・ニュージーランドの河川における在来ザリガニ(Paranephrops planifrons)にとっての潜在的な脅威(Stephanie Parkyn/翻訳:中田 和義)〈(1)はじめに(2)森林破壊がザリガニ類に与える影響(3)生息地(4)結論
・ロシア極東大陸部の淡水性エビ・カニ類(Evgeny Barabanshchikov/ロシア語翻訳:川井 唯史)〈(1)ザリガニ類(2)淡水エビ類〉
・ロシア極東域,サハリン島と千島列島における淡水のエビ・カニ類ー種,分布,形態,生息環境ー(Vjacheslav Labay(Labaj)/ロシア語翻訳:川井 唯史)〈(1)概要(2)研究の歴史(3)分類〉
・韓国産淡水性エビ類の分布と繁殖生態(金 正年・呉[漢字別につき要再入力] 哲雄)〈(1)韓国産淡水性エビ類の研究史(2)韓国産淡水性エビ類の分布(3)韓国産淡水性エビ類の繁殖生態〉
文献
あとがき
索引
編者・著者紹介