
雑誌「海洋と生物」において 2016年から2021年にかけて計15回にわたり連載した解説文を一部改訂してとりまとめた書籍。海棲哺乳類の保全・管理に必要な調査・解析手法は、多岐にわたっている。これらを各専門分野の一線で活躍する研究者により体系的にまとめられている。
書籍化にあたり、新たにコラムを追加し、最新情報の紹介や研究成果に残りにくい野外調査の経験などが収まっており、新手法の開発に挑む研究者の正直な喜怒哀楽が伝わるような内容になっている。
海棲哺乳類はいまだ謎が多く,惹きつけられる。一方、人間活動を規制し然るべき状態を目指すのが保全・管理であるため、対象動物に加え人間も考慮する必要があり,時として厳しい判断を迫られることがある。執筆者が先達から多くを学んできたように、本書が後進の研究者の足がかりとなり,今後,この分野の調査・解析がさらに発展していくように執筆者の強い期待が込められた書籍になっている。
序章 海棲哺乳類の保全・管理のための調査・解析手法/村瀬弘人・北門利英・服部薫・田村力・金治佑
第1章 目視調査/村瀬弘人・松岡耕二・服部薫・磯野岳臣
コラム1 幻のクジラを探す/松岡耕二
第2章 標識調査/服部薫・木白俊哉・小林万里
コラム2 測るために運ぶ/堀本高矩
第3章 バイオテレメトリ・バイオロギング/南川真吾・村瀬弘人・三谷曜子
第4章 音響/赤松友成・木村里子
コラム3 鳴くクジラ、鳴かないクジラ/赤松友成・木村里子
第5章 形態計測/坂東武治・中村玄・磯野岳臣・堀本高矩
コラム4 古くて新しい大型鯨類骨格形態研究の今/中村玄
第6章 年齢査定/前田ひかり・磯野岳臣
コラム5 エピジェネティクスを用いた研究 ~鯨類の年齢推定を例として~/前田ひかり
第7章 繁殖/船坂徳子・石名坂豪
コラム6 鯨類における胎仔の特徴と調査研究/船坂徳子
第8章 食性・栄養状態・摂餌量/田村力・後藤陽子
コラム7 真冬の北海道での青空サンプリング/石名坂豪
第9章 環境化学/安永玄太
コラム8 糞採り名人への道/後藤陽子
第10章 個体数推定/金治佑
コラム9 新たな鯨類の摂餌量推定方法について/田村力
第11章 空間モデル/村瀬弘人・金治佑・佐々木裕子
コラム10 時系列データと状態空間モデル/金治佑
第12章 集団遺伝学的解析/北門利英・西田伸・吉田英可
第13章 個体群動態モデル/北門利英
コラム11 最新機器を使用しながら鰭脚類の研究者も進化する!/小林万里
第14章 海洋生態系モデル/村瀬弘人
第15章 個体群の保全と管理の方法/北門利英
コラム12 海棲哺乳類を対象とした調査と動物福祉/村瀬弘人