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ISBN978-4-909119-16-2
B5変形判 292ページ
岡田知也・三戸勇吾・桑江朝比呂:編著
●本書では,新たに開発した「沿岸域の環境価値の統合的評価手法(IMCES)」について述べている。
この手法は,沿岸環境の保全・再生・創造の価値を適切に評価し,その価値をわかりやすく“見える化”するために開発され,一般的な環境経済学とは違った切り口で,実務的な視点から環境や生態系が有する価値の定量化を試みたものである。
環境の保全・再生・創造の現場からは,その取り組みの効果をよりポジティブに,客観的に,適切に評価する方法が望まれている。また,自然再生の場における市民協働型の管理においてさまざまな背景をもつステークホルダーの共通の理解を得るために,加えてESG投資を意識した民間企業へ環境の保全・再生・創造の価値を数字として理解できるツールとして,本手法を提供することが必要である。
本書をきっかけにできるだけ多くの現場で本手法を試してもらうため,可能なかぎり詳細に計算過程を示すことを心がけた。また,本来は企業秘密としたい調査方法や計算方法の詳細を,包み隠さず付録として提示している。これらの方法は,これからわれわれと同様の問題意識をもって沿岸域の環境学を志す学生の演習にも役立つと考えている。
評価とモニタリングは一体であるべきであるが,現時点において環境の保全・再生・創造の取り組みに関する事後モニタリング項目は,水質・底質・生物などの生態系の機能に関するものであり,利用の項目はなくサービスに関するものは完全に抜け落ちている。本手法の開発は,今後のモニタリング体系の構築とも関連している。今後のモニタリング体系は,生態系の機能の観点だけでなく,環境や生態系の価値の定量評価もできるように変わっていくべきである。そのためにも,評価手法の確立は重要である。
(「まえがき」などより抜粋・改変)
●主要目次●
まえがき
刊行によせて
第1章 沿岸域の環境価値の統合的評価手法の概要
1. 1. はじめに
1. 2. 沿岸域における「環境価値」とは?
1. 3. IMCESにおける環境価値の評価方法
1. 4. 本書の構成
第2章 環境価値の得点化法(ESM)の概要
2. 1. 環境価値の指標の設定
2. 2. 空間スケールと時間スケールの取り扱い
2. 3. 得点の算定方法
2. 4. トレンド指数の算定方法
2. 5. PR指数の算定方法
2. 6. 持続可能性指数の算定方法
2. 7. 概念モデルを用いた指標とPR指数の設定
コラム1 環境価値の定義ととらえ方の重要性
第3章 環境価値の得点化の実際
3. 1. 評価実施海域および評価する干潟の選定
3. 2. 干潟の評価範囲の設定
3. 3. 概念モデルの作成
3. 4. データ収集
3. 5. ESMの得点の計算
第4章 比較評価法(CEM)の概要
4. 1. はじめに
4. 2. 環境価値の分類
コラム2 価値のダブルカウントの検討
4. 3. 時間軸の取り扱い
4. 4. 空間軸の取り扱い
コラム3 空間スケールと環境価値
4. 5. 環境経済学的手法の概要
4. 6. 新たな表明選好法:CEMの概要
4. 7. CEMの利点
4. 8. 許容評価額の取り扱い
4. 9. CEMによる評価の実施手順
第5章 環境価値の経済価値化の実際 その1
5. 1. 「基準とする環境価値」の選定と評価手法の設定
5. 2. 食料供給の経済価値化
5. 3. 水質浄化の経済価値化
5. 4. 観光・レクリエーションの経済価値化
5. 5. 日々の憩いの場の経済価値化
第6章 環境価値の経済価値化の実際 その2
6. 1. 「評価する環境価値」の設定
6. 2. アンケートの基本設計
6. 3. 水準および提示金額の設定
6. 4. 解析方法と設問の設定
6. 5. 調査票の作成
コラム4 アンケートの質問方式の重要性
6. 6. アンケートの実施
6. 7. 許容評価額の解析
コラム5 異なる環境価値を比較できるか?
第7章 統合評価
7. 1. 統合評価の概要
7. 2. 環境価値の統合
7. 3. 統合評価
第8章 これから造成する干潟を対象とした環境価値の予測と事前評価
8. 1. はじめに
8. 2. 海域および対照干潟の設定
8. 3. 各環境価値の指標の基準値
8. 4. 概念モデル
8. 5. 各環境価値に対する指標の値の設定
8. 6. 得点化
8. 7. 環境価値の経済評価
8. 8. 環境価値の事前評価
第9章 干潟の環境価値の評価に向けたモニタリング
9. 1. はじめに
9. 2. IMCESの実施に必要なモニタリング項目
9. 3. CEMの実施に必要なデータ
9. 4. 環境価値の評価に向けたモニタリング
Appendix 1 情報収集
1. 収集するデータの種類および収集方法
2. 情報の収集先の探索
3. 公開されている公共データの収集
4. ヒアリング
5. 文献調査・WEB調査
6. 情報収集の勘所
Appendix 2 利用実態調査
1. 調査範囲および計数地点の設定
2. 調査日時の設定
3. 来場者数の計数調査の実施方法
4. アンケート調査の実施方法
5. 利用実態調査の実施体制およびスケジュール
6. 関係機関との調整
7. 利用実態調査の実施
Appendix 3 CEM(比較評価法)アンケート調査 調査票
Appendix 4 統計解析ソフトを用いた解析の実際
1. プロダクションモデルを用いた漁獲量の推定(ESM過程:食料供給)
2. 階層ベイズモデルを用いたメタ分析モデルの導出(ESM過程:水質浄化)
3. トラベルコスト法を用いた消費者余剰の算定(CEM過程:観光・レクリエーション,日々の憩いの場)
4. 因子分析を用いた規範意識の定量化(CEM過程)
5. 許容評価額の算定(CEM過程)
索引
[著者紹介]
編著者
岡田知也(国土交通省 国土技術政策総合研究所 沿岸海洋・防災研究部 海洋環境研究室)
三戸勇吾(復建調査設計(株)環境部)
桑江朝比呂(港湾空港技術研究所 沿岸環境研究グループ)
著者(五十音順)
秋山吉寛(国土交通省 国土技術政策総合研究所 沿岸海洋・防災研究部 海洋環境研究室)
井芹絵里奈(国土交通省 関東地方整備局 東京空港整備事務所)
内藤了二(国土交通省 国土技術政策総合研究所 沿岸海洋・防災研究部 海洋環境研究室)
黒岩寛(元国土交通省 国土技術政策総合研究所 沿岸海洋・防災研究部 海洋環境研究室)
渡辺謙太(港湾空港技術研究所 沿岸環境研究グループ)
棚谷灯子(港湾空港技術研究所 沿岸環境研究グループ)
杉野弘明(東京大学大学院 農学生命科学研究科)
徳永佳奈恵(Gulf of Maine Research Institute)
久保雄広(国立環境研究所 生物・生態系環境研究センター)
高濱繁盛(復建調査設計(株))
高橋俊之(復建調査設計(株)環境部)
菅野孝則(復建調査設計(株)環境部環境技術課)